俺と共鳴せぇへんか?

自分自身が面白いと思ったもの、素晴らしいと思ったもの、素敵だと思ったもの、すげぇと思ったもの、


というのは、


それを誰かと共有したいと思うのがニンゲンというものの常であって、
それが、「俗」に墜ちないものであるならば尚更なのだけれど、


数学の教師は数学について、化学の教師は化学について、歴史の教師は歴史について、外国語なら外国語について……、
それを教授する者は、みなそうであると思うのだが、


自身がそれを愛して止まないことを、その世界の何をどう愛して止まないかを、
巧く伝えることのできるものが、優れた教授者だと思うのだが、


ボクは、文学というものについて、それが描くところの世界について、それを取り巻く、哲学やら芸術の世界全般について、


その魅力を、考えることの楽しさを、巧く伝えることができればいいな。
と、思いながら、今までこの仕事をし続けているのですけれど、


こちらの思惑や、その実践のやり方が巧くやれていると思うところで、それなりの手応えというものがある時に、


仕事ができている。と、実感するのですけれど、


それを受け止めるだけの知的好奇心が発動する余地のある若者を前にしていながら、


勉強や学習というものが、目先の目的を叶えるための手段や方法に特化されて、
それそのことばかりを、数値目標やら努力目標やらで縛り付け管理することが常態化されていく中で、


こちらの思惑や、その実践の方法が、大きく間違ってはいないと思うにもかかわらず、


それに見合うだけの手応えを感じることが少なくなっている。どんどん少なくなっていることが、


このところのボクが疲弊する、大きな要因のひとつなのだと気づいてはいるので、


何とか、もうちょっと、頑張ってみますわ。


 「僕と共鳴せえへんか」 by 柳吉 from 『夫婦善哉織田作之助
 「俺と共鳴せぇへんか?」 by 町田町蔵