うたかた

先日、バンドメンバー全員で立ち寄ったからか、
朝方、今はもうなくなって平地になっている実家の夢を見た。


柱の傷や、敷居のへこみ、家電製品諸々、屋内の空気感……。そーゆーものどもが妙に鮮明で、
オレはイヤで仕方なかった、いい思い出のほとんどないそんな実家に、カミさんと共に住んでいる。


熟練熟達の大工と思しき、法被を着たオヤジが、
「ここは何度取り壊しても、すぐにまた再生するからねぇ」など言うていて、
オレとカミさんは、取り壊したのにまたぞろ再生した実家に住んでいる。


地主が困るだろうと思うのだが、オヤジは、
「この家は、見えねぇ者には見えないからな」と何故か江戸っ子の口調で言う。


オレとカミさんは、一般通常人には見えない家に住んでいる。
今のままじゃあんたらも困るだろーと、大工のオヤジ、腕の良い大工というか解体屋連れて来たらしい。
裏庭に面したサッシ開くと、5人余りの見るからに腕の良さそうな屈強な男たちが、それぞれに大槌担いで腕を撫している。


あー、これでもう大丈夫だなと思う一方、取り壊される前に必要なモノまとめなければ。通帳に、印鑑に……、あとは、何だっけ……。あー、取り壊すのはいいとして、こういきなり来られても困る……。


と、焦っている中、目が覚めた。


よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかとまたかくのごとし。