続・僕の好きな先生

清志郎が唄った『ぼくの好きな先生』


   たばこを吸いながら いつでもつまらなそうに
   たばこを吸いながら いつでも部屋に一人
   ぼくの好きな先生  ぼくの好きなおじさん


しばらく前から、いい歳をしたオトナであっても、校舎内は元より、管区内でタバコを吸うことは「罷りならん」ということになっております。
たばこを嗜む教員は、もうほとんど数えるほどしかいなくなっております。
それは、きっと、いーことなんだろーね。だろーさ。


   たばこと絵の具のにおいの あの部屋にいつもひとり
   たばこを吸いながら キャンバスに向かってた
   ぼくの好きな先生  ぼくの好きなおじさん


美術教師は今でも、美術準備室と呼ばれる部屋に、多くの学校の場合、ひとりで過ごしております。
が、そこでたばこを吸うことは元より、自分の作品のためにキャンバスに向かう余裕など、もう、ほとんどなくなっております。
ボクは国語教師ですが、自身の教養と興味関心の幅を広げるために、読書の時間を確保することができなくなっております。
創作や読書は、仕事終わってからしなさいよ。って、ゆーことなんだろーね。
それは、きっと、いーことなんだろーね。だろーさ。


   たばこを吸いながら 困ったような顔して
   遅刻の多いぼくを  口数も少なく叱るのさ
   ぼくの好きな先生  ぼくの好きなおじさん
  

   たばこと絵の具のにおいの ぼくの好きなおじさん
  

今の職場では、遅刻は「絶対悪」として、許してはならぬこと、限りなくゼロにしなければならぬこととして、
企業が打ち出す営業目標のように、「年間○○回以下にする!」などようのことを真面目な顔で公言し、それに向かって奮闘努力しております。
遅刻を重ねた者を呼び出し、「呆れたような顔」で「口数多く」叱責し、ペナルティを課し、「遅刻の多いヤツ」は社会に出て通用しないから悔い改めよ。
キミはアナタは、「ダメ人間」だとレッテルを貼りながら、そんなレッテルを貼られたくないなら遅刻をするな!という類の指導を、躍起になって致しております。
遅刻の多いヤツと面付き合わせて、そやつが心に抱えているあれこれについて、時間をかけて話を聞いてみよう引き出してみようとする者は、
目標の達成に貢献できない使えないヤツということで、配置替え部署替えをさせられたり致します。ボクのことですが(笑)


   たばこを吸いながら あの部屋にいつもひとり
   ぼくと同じなんだ   職員室がきらいなのさ
   ぼくの好きな先生  ぼくの好きなおじさん


職員室ではひとりではないけれど、職員室はそれほどきらいではないけれど、
どちらかというと、美術室や図書室の方が好きだし、職員室がきらいな連中の気持ちはよくわかるつもりなのですけれど、
自身の学校生活が楽しかったから教師になろうと思った、教師になったという者が多いので、学校や職員室がきらいな生徒の気持ちのわかる教員は意外に少ないし、
近頃は、教師ばかりでなく生徒の方も、「クラスTシャツ」などようのもの拵えて、何かというと集団で盛り上がろうとしたがる姿が象徴しているように、「仲間」とか「一体感」というのが大好きなので、
教員集団のみならず、生徒たちとの間にも壁があったり致します。


   たばこを吸いながら  劣等生のこのぼくに
   素敵な話をしてくれた ちっとも先生らしくない
   ぼくの好きな先生   ぼくの好きなおじさん


   たばこと絵の具のにおいの ぼくの好きなおじさん


たばこを吸いながら話はできなくなったけれど、授業中、或いは、授業を離れた一対一のニンゲン同士として、
「素敵な話」を致したいと、日々思っているのですけれど、それこそが教師がティーンズを前にしてするべき仕事だとぼくは思っているのですけれど、


多くの生徒さんにとっての、いい歳をしたコドモのことに首を突っ込みたがる保護者の皆さま方にとっての、「素敵な話」というのは、
効率の良い勉強法学習法だったり、大学入試攻略法、というものだったり致しますので、
そんな話ができないわけではないので、致したりもしているのではありますが、


ぼくの思うところの、本当の「素敵な話」は、


管理職もそれを望んではいないし、生徒や保護者の多くもそれを望んでいないことになりつつあるわけで、


「ぼくの好きな先生」になろうというぼくの思いは、ほとんど誰からも理解されませず、


もちろん、評価もされませんので、


絶滅危惧種」に指定されつつあります。 というより、もう確実に指定されております。


残された時間を、


それでも、どこかに潜んでいるに違いない、未来のキヨシローのために使おうと、ぼくは思っております。


絶滅危惧種」なだけに、本当に「絶滅」させられるかもわかりませんですけど。


うにゅ。