密告する人々

ガッコというところ、それがどんなガッコであれ、


外部から、あれこれ「苦情」というの入るものでありまして、


先の職場にあっては、


近隣のコンビニから、「お宅の生徒さんたちが、店の中で座り込んだり寝そべったりしているので迷惑だ」


とか、


近隣の住宅から、「ウチのマンションの踊り場でタバコ吸って、吸い殻をポストに捨てていく」


などようの苦情電話が、毎日のように入りましたわけで、


それは確かに迷惑でしょうから、馳せ参じて対処に当たるという日々だったのですが、


今の職場、そういうことはないにせよ、


「イヤホンをつけて、スマホ見ながら、自転車に乗って、信号無視をしていった。お宅は、どんな教育をしているのか?」


とか、


「登校時、広がって歩いているから邪魔である。お宅は、どんな教育しているのか?」


などようの苦情電話はかかって参りますわけで、対応する教職員の皆さま、ご苦労さまなのでありますが、


苦情の大半は、というか、ほぼ全ての苦情は、


先の職場とは違って「匿名」。


どこのどなた様が、何を思ってわざわざ電話番号調べてかけてきたのかわからないよーなのがほとんど。


そういう「匿名」の苦情の数々、まともに相手しているとキリがないのですけれど、


教員の中には、真面目に対応しようとする方がいて、


特定の時間、特定の通りは公道であるにも関わりませず、「通行禁止」である旨を生徒さんたちに申し伝えたり、


これこれこういう苦情があるので、交通ルールを守りなさいと言った旨の連絡を、各クラスに連絡掲示するよう準備したり、


するわけです。


今日などは、


「昨夜19時頃、某鉄道準急行列車の車両内で、具合の悪くなった老婦人を、女子高生4名と男子高生1名が、取り囲んでボコボコに……」


ではなく、「みんなで介護に当たっている姿がすがすがしく、お宅の生徒さんたちはすばらしい」


という由の電話を、わざわざかけてこられた方あって、この方も「匿名」だったかどうかまでは確認致していないのですが、


先の電話はもとより、この電話にしたところで、わざわざ電話してくるようなことですか?


で、それをわざわざ、各クラスに全校生徒に連絡して掲示しようという動きもあって、


げんなり……。


直接被害にあったことでもなく、怪我させられたわけでもないことを、あなたは、わざわざ、「匿名」で電話して文句言いますか?


そういう輩は、はっきり申し上げて、いわゆるひとつの「常識人」ではありません。


そんな「常識人」ではない者どものコトバに振り回されるのはどうかと思われるわけで、


一方で、奇特な方のお褒めのコトバに嬉々とするのもどうかと思われるわけで、


ボクは、連絡箱に入っていたその連絡掲示物について、担当クラスの皆さんに、


「こんなことがあったみたいですよ」という中身を伝えた上で、


「みんなは、こんなことをわざわざ匿名で電話するようなオトナにはならないようにしてくださいね」と結んでから、


大事な連絡たくさんある中、そんなもの貼る場所ないので、そのプリントは、ゴミ箱に捨てました。


で、流石に、これを連絡せねばならない、対処しなければならないと思った教員はいなかったようですが、


「出勤時、最寄り駅のホームにお宅の生徒がたくさんいるので邪魔で仕方ない。何とかしてくれ」


という苦情まで、もちろん「匿名」で、実際に、複数あったようで、


現在のこの国の人たちの中には、ここまで壊れてしまっている人も、少なくない形で存在しております。


そんな中、政府が成立させたがっている「共謀罪」、


テロリストのみならず、外国の意をくんで政府の転覆を謀るヤツらがウヨウヨしているなどようのことを本気で信じている人がいる現状、


そういう輩は、お上に代わって我々国民の手で摘発しよう、と考える者が増殖するであろうことは必定。


政府を批判するメディアや市民運動を、「国家を転覆させようと企てる反日分子」と断じてはばからない、アタマのネジが飛んでしまった人も少なくない。


この法案、成立するや否や、ガッコに苦情電話を「匿名」でかけてくるような連中が、我が意を得たりと、


熱心に、隣人を密告したり、排除したりし始めるだろうこと、火を見るより明らかで、


共謀罪」で政府が狙っているのは、お上に逆らう都合の悪い者たちを密告する人々の養成。


警察や公安に金かけるより、簡単で安上がりですから。


「常識」というネジの吹き飛んだアタマの持ち主が、国家に隣人を売り飛ばす社会。


みなさま、どうやら、そういう社会に致したいようで。


寒気以上に、吐き気がしますわ。


げろげ〜ろ。