消えるもの消えないもの消せないもの
しつこくこびりついて離れないものと、
あっさり消え失せてしまうものがある。
記憶の話。
基本、嫌なことはなかなか忘れない。
折に触れ、反芻するからなのだろう。しなきゃいいのに。
そして、
忘れるのは、道順道程。
さすがに、最寄り駅から今は跡形もなくなった実家までの道は覚えている。
実家から小学校には行けると思う。
が、2年ほど通った同じ町内の小さな学習塾がどこにあったか、思い出せない。
6年間通った中高、駅から学校までの道程を思い出せない。
サボリ常習だった高校と違って、休まず1年間通った予備校も、駅からの道程、まったく思い出せない。
駅や駅前の風景すら覚えていない。
大学時代、都合4度引っ越した。
最初に入った寮と、3度目に住んだボロアパートのあった場所には地図を見ないでも辿り着けると思う。
が、2度目に住んだ借家と最後に住んだアパートは、地図なしに辿り着ける自信がない。
最初に6年間勤務したガッコ、最寄り駅から迷わず辿り着けるような気がしない。
結婚してから最初に住んだ職員住宅、去年久々に最寄り駅に降り立つと、
ずいぶん様変わりしていたというのもあるけれど、どちらに行けば日々歩いていた道に至るのか、わからなかった。
道そのものは覚えているのですけれど。
歩いていた道、辿ってきた道が、記憶から消えていく。
ボクは、きっと、移動を単に移動として捉えるだけで、移動そのものを楽しんでいなかったのだろう。
にしても、
なぜここまで、道順が道程が記憶から消えていくのか?
二度と来ることがないから? もう必要がないから?
嫌なことどもだって、
必要なんてないはずなのに、
ね。