情けは人のためならずじゃ

休み時間、「非常食(カップ麺ですけど(笑))」でも買い出しに行こうと、
近場のスーパーまで、太陽光直射の下よろよろ出かける。


裏道を行こうとすると、道ばたに倒れているおっさんひとり。


熱中症かもしらん……、と、派手なシャツに黄色いズボン、
これまた派手な色合いのでかいスポーツバッグに埋もれるように倒れているおっさんに声をかけると、


「あー、すんませんすんません。こけてもーて、起きられへんで、助かります」
と、スポーツバッグの横に転がっている茶色い紙袋からこぼれ出たものを拾おうとしながら、意識はある。


「大丈夫?起きあがれる?肩を貸しまょうか?」と尋ねると、


「はー、医者からの帰りやねんけど、そこのたこ焼き屋で酎ハイ呑んで帰ろ思たら、こけてもーて……。薄いの2杯だけやねんけど。もう、ウチ、すぐそこですねん」
と言うので、


「バッグと袋、持ったげますわ。歩けます?」と、
ずっしり重たいスポーツバッグと、どうやら病院で処方されたらしいてんこ盛り薬入った紙袋を持つと、おっさんよろよろ立ち上がる。


「すんませんなぁ。すぐ、そこの文化住宅ですねん。助かりますわ」と歩き出すおっさんと並びながら、


「医者から、酒止められてるのとちゃいますん?死にまっせ」と言うオレに、おっさん、


「そーですねん。肝臓いわしてますねん。薄いの2杯やってんけど……。そのバッグ、重いでっしゃろ、着替え入ってますねん」


と、どうやら、おっさん、病院から退院してきたばかり。
着替えの数々スポーツバッグに詰め込んで、処方された薬の山抱えて、家に辿り着くのを待ちきれず、
たこ焼き屋で一杯やったようである。


薄いの2杯でも、久々に投入されたアルコール、いわしていた肝臓、悲鳴を上げたものと思われる。


すぐそこ、と言ったおっさんの言葉に嘘はなく、30メートルほど先にある文化住宅
おやまぁ、ここに、こんな昭和な物件がまだあったのですね。という佇まいの文化住宅がおっさんの家。
さっきまで倒れていたくせに、辿り着くと、表に止めてある自転車のタイヤに空気が入っているかどうかチェックしてみたりするおっさん、


1階の、玄関のドア開けっ放しになっているウチ指さして、「ここですねん」
その声に気づいた玄関横の台所にいた、おっさんの嫁はん、額に汗が光る首にタオル巻いた、これも典型的な昭和な感じのおばさん、
「あんたか? 帰ってきたんか?」


彼らが重ねて礼を言う言葉を聞くのもそこそこに、上がり框にバッグと紙袋置いて、
「ゆっくり横になって休みなはれ。体、大事にせなあかんよ」


と、オレ、そこから立ち去った。


事情は知らんけど、奥さんおるなら、ダンナが退院するなら迎えに行ってやれよと、思ったオレだった。
酒で肝臓いわして入院していたのに、退院するや否や呑まずにおれないおっさんに、死んだオヤジの姿がダブったオレだった。


にしても、こういう事態状況に出くわすのもまたオレだと思うのでありました。


そして、夜


友人の娘さん大学受験、提出せにゃならんレポート、ガッコの教師が忙しがってすぐに添削してくれぬ。
というので、オレのできることならば、と出かける。
こないだ、中学生になったなどようのこと聞いたように思うたのに、すでにして高3、であることに驚く。
しっかりしたお嬢ちゃんになってることに関心致す。


「取りあえず、テーマに沿って自由に書いてみて」と言った言葉を受けてお嬢の書いた文章、
ほとんど手を入れるところ、ござんせんでした。


というわけで、


一日二善


な、アタクシでした。 あへ。