つまらない話
好きな作家に、芥川を挙げる者が多かった。
『山月記』を読むと、
教室中、みんなが、新潮文庫か角川文庫の中島敦を手にしていた。
『檸檬』を読むと、
今はなき「丸善」に、青くて酸っぱい爆弾を置きに行く若者が仰山いた。
「梶井と太宰の容貌が逆だったら、どうだったんだろ?」という話をしたら、
「私の梶井を愚弄しないでください」と、食ってかかってくる女子高生がいた。
のは、
昔の話。
『山月記』を読んでも、中島敦の文庫本手にしている者どこにもおりませず……。
場所を変えれば、同じ光景が展開しているとも思えませず……。
何が変わったのか、食べるものの他は、何事においても「薄口」になって、
文学なんてもの、体が受け付けなくなっているらしい。
尊大な自尊心を太らせて傲岸になることか、臆病な羞恥心を抱え込んで塞ぎ込むか、
人生をテーマパークと決め込むか、
嫌な都政、あいや、渡世だなぁ……。