挑戦者

さすがに、


共済組合の健康保険料や、将来いくら頂けるかが心許ない、年金の支払いは致しておりますが、


いわゆる任意の業界が仕掛けているやらかしている、「保険」なるもの、思うところありますゆえ、


強制的に加入が義務づけられているところの、住居にまつわる火災保険と、


任意ではありますが、自動車保険以外には、


なぁーんにも入っておりません。今後も入る気はございません。


そんなアタクシ、今に至るまで、並み居る保険勧誘員さまたちの飽くなき挑戦を、袖にし続けて来たのですが、


この歳になりますと、新たに勧誘しようと試みる人もいなくなっていたのですが、


何をとち狂ったか、勘違いしたのか、


老いも若きもそれ相当の数が存在している、わが在所在室で、


オイラを勧誘しようというチャレンジャーが現れまして、


「ボクと話をしても、お互いに時間の無駄ですよ」
「外貨預金であれ、貯蓄型であれ、年金補填型であれ、何がどうあっても入りませんから」


と、言っているのに、


「この保険には、ゴルフ場や宿泊施設の優待サービスも付帯しておりますし」


など言うから、


「ボクは、ゴルフはやりませんし、宿泊施設を利用することもこの先、数えるほどしかないと思いますんで。そもそも、俗っぽいことには興味ないので」


と、返すと、


「でも、毎日のこの生活がいつまでも続くわけじゃないですし、先のことを考えましたら、うんぬんかんぬん」


と言うので、


「ボクは日々、くたばるその時のこと考えながら生きてますけど。明日はどうなるかわからんですから」


と、返すと、


「いや、毎日そんなことばかり考えてる人はいませんでしょう」


と、言うので、


「日々、自身のくたばる時のこと考えてないから、大抵の人、ダメなんじゃないすか?」


と、返す……。のですが、埒もなく。


同室の同僚、仕事しながら、ボクと勧誘さんのやり取りに聞き耳たてて、


どうやら、笑いたい、口を挟みたいのを堪えているようで、仕事にならないようで、


「チャレンジャーやなぁ。ボクと喋って面白いですか?何の得にもならないですよ、お互いに」


と、言うのですけれど、


今日は、ボクのフルネームと生年月日、聞き出して帰って行かれた。


「セイネンガッピ?ウチにはちょくちょくないもんがあるんですけど、セイネンガッピも確か、なかったのではないかと……」


と、返したのですけれど、落語の知識や素養はない方のようで、何の面白みもございませんでした。


数日後、オレ様用の、見積もりというか、計画書のよーなもの持参して、


また、あーだ、こーだ、説明しようとするんだろうなぁ。面倒くさいなぁ。


保険なんちゅのは、何をどうすりゃ、得になるのか損をするのか、そういうことを考えるのが好きな人が入ればよろしい。


支払うお金で安心が買える人が入ればよろしい。


ボクは、損得考えて算盤はじくようなことに、人生の時間を費やしたくないのであります。


悪いこたぁ言わない。時間の無駄ですぞい。


にしても、


どーして、ボクにピンポイントなのか? それが、部屋中の謎……。