忘れない

前任校の同じ教科の同僚だった方、
定年後も、再任用で前任校に勤務されているのですけれど、


その方のブログから(一部、文体を改編、説明を追加しております)


 来春、卒業予定の女生徒。
 母親を亡くし、弟の父との3人暮らしだったけれど、
 父親が酒とギャンブルに嵌って家に金を入れず、家賃を滞納、アパートを出なければならないことになった。
 弟との暮らしは、彼女が稼ぐアルバイト代でまかなうも、食費にも事欠いている様子。
 彼女の担任教師が、生活保護の手続きを勧めようとしてはいるけれど、父親に一定の収入があるから難しそう。
 中学生の弟は施設に預かってもらい、彼女にはなんとか自活して卒業、就職まで漕ぎ着け、自立してほしい。
 今月から高校生も会社訪問(「応募前職場見学」と言う、試験は9月以降)が始まるけれど、
 ジーパンやTシャツはあっても、会社訪問に着てゆく服がない(前任校、標準服なるものはあったけれど、購入を義務づけてはいなかった)。
 相談したら、こころ優しい同僚が、かつて自分が使ったスーツを提供してくれた。ブラウスも用意してやれたらいいな……。


こういう職場に9年勤務して、学年主任までやっておりましたな、やっておりましたよ。


ということを、忘れてはいないけれど、ともすれば忘れそうになる。


こういうことどもを他人事として日々を送っている人たち、送っていられる人たちばかりを相手にして、
志望大学の偏差値がどうの、合格圏内への模擬試験での目標得点まであと何点、
などようのことばかり耳にしながら、日々を送っていると、


忘れてはいないけれど、下手をすると忘れそうになる。


こういう職場を経験したことのある人もいれば、たまたままったく知らないで来た人も、
知らないで済むようにうまく立ち回り生きて来た人もいる中で、日々を送っていると、


忘れてはいないけれど、当事者意識というヤツを失いかけてしまうことがある。


前任校、自ら望んで行った職場ではないが、
もう一度行くかい?と、聞かれたら、やはり望んで行きたいとまでは思わないけれど、
9年のうちの数年は、とりわけ結構ハードな年月だったけれど、行って良かったと思っている。


現任校、自ら望んでやって来た職場ですけれど、
ここが最高ですか?と、聞かれたら、


いろんなことがおかしいね。おかしいよ。と、思っている。


思いながら、大学受験の出願や諸々の手続き、ぜんぶ親任せで、大学に入ったら、親の金でスーツ一式買いそろえて貰うティーンズたちの、
さほどデキの良ろしくない答案に、赤ペンで○やら×やらつけている。


この世界には、


幸せになろうともがいても、自分の力だけではどうしようもない人たちがいることを、
この世には、切ないことや悲しいことがたくさんあるのに、そういうことには目を向けず、
自分の置かれている環境や状況を当たり前のこととして受け止めるだけで、自身の幸せしか目に入らない人たちの方が多いことを、
自分の幸せのために、自身のやっていることが、誰かを傷つけ損なっているかも知れないということに思い至らない人が多いことを、


忘れそうになっても、忘れません。


忘れないオイラ、


明日はバンドマン、Live at 「Mele」


間違いなく、あの頃と同じ気持ちで、音楽やってます。


はい。