闇を切り裂く音

四十過ぎまで一度も罹ったことのなかったインフルエンザに、
何の因果で、ここに来て二度ならず三度までもやられなきゃならんのか、


わけがわからんのであるが、
今回も早めの手当で、大事には至らずに済みそうではあるのだけれど、


タミフルとウイルスが闘っておるのか何なのか、カラダの中がザワザワする。
体温もまだまだ安定しない。


幸いなことに食欲はないではないのだが、味覚が壊れているようで、甘味と旨味以外の味がわからない。


どーせ仕事を休ませてもらってんだから、休みを楽しめばよさそうなものだが、
体調が良くない中、楽しむのはなかなか難しい。


本を読んだり、映画を観たりする体力がない。
耳にイヤホン突っ込んで、音楽聴くならいけるだろ。


と、何を聴くかと選曲していると、こういう時に限って、最近はあまり聴かないFREE JAZZに心の針が振れたわけで、


それも、この期に及んで、阿部薫


あー、アルトサックスってこんな風に吹けばいいのね。と、悟ったような顔して、好き勝手吹き散らしていたかつてのオレ、
音に何ができるか?などようのこと思っていたかつてのオレ。


叫び怒り噎び泣き喚く阿部薫のサックス聴いてたら、なんだか、とても、悲しく、寂しく、切なくなった。


体や心が弱っている時に、聴いてはいけない音のようにも思ったけれど、
体と心が弱っているからこそ、欲したのかもしれないなとも思った。


闇を切り裂く音が聞こえた。