時が過ぎゆく中で
これも職場の話。
「教務室」に設置されたコピー機の前の壁に、「九条の会」のポスターが貼られている。
この職場に来て2年目になるが、来た時にはすでに貼られていた。
誰が貼ったのかは知らない。そして剥がす者がいないので今も貼られている。
職場には、カラーコピー機なるものはない。モノクロ専用のコピー機も、事務室とこの部屋の2台しかない。
教員は「教務室」のコピー機を利用する。
だから、いきおい、この2004年に「九条の会」が結成された当初のポスターが目に入る。
ポスターに載る呼びかけ人、右回りに、
井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子。
時は流れ、すでに四人が故人……。
反戦や、平和や、基本的人権の大切さを教育現場で語ることが当たり前でない時代になってきた。
「護憲」を語る者が、「反日・売国奴」呼ばわりされる時代になってきた。
「民主主義」と「金」のどちらを取るか?
という問いに、「自由より金」、と答える者の声が大きい時代になってきた。
何のための「学問」か?身につけた「教養」というものを何のために用いるのか?
という根本的なことを語る者が少なくなってきた。語ることが憚られる雰囲気になってきた。
このポスターを日々目にしている他の教員が何を思っているのか知らないけれど、
ボクは、このポスターが、
ボロボロになってしまったからということとは別の理由で、剥がされてしまう時が来ないことを願っております。