戻すならすべてを
一度変えたことは、そこにどんな問題があっても決して元に戻そうとはしない。
失敗を認めたくないから。
それがこの国の人々の特徴であると思っているのだが、
どうやら、昔に戻そうとしているものがあるらしい。
それは、学校の土曜日授業。
土曜日に昼まで授業をやっていた時代を、生徒としても、教師としても、通ってきた者として、頭ごなしに反対するつもりはない。
実際、土曜に授業をしていた頃の方が、ガッコウという場所には、「ゆとり」があった。
そのことは、現場にいる者は、みんなが思っている。
世間の週休二日制に合わせるべく、月に二度土曜が休みになり、隔週で土曜が休みになり、そして、土曜には授業がなくなった。
のだが、
その代わり、月から金までの間に土曜日にやっていた分の授業が詰め込まれた。
詰め込まれるだけでなく、カリキュラムがいじくられ、
高等学校では、「総合学習の時間」なるものが必履修となった。かててくわえて「情報」という教科も必履修となった。
それらが入り込んできたことで、他の教科の授業時間数が減ることになった。
ガッコによっては、減っては困るという授業は、0時間目や7時間目や土曜日に「講習」という名で授業が行われた。
「進学校」を標榜するガッコは、0時間目や7時間目や土曜日に「講習」を行わねばならん。行うのが当然。
ということになった。
熱心に「総合学習の時間」のメニューを考え、実践している教師には悪いが、
教科「情報」の教員には申し訳ないが、
「総合学習」でやっていることは、良心的なガッコや教員は「HR」の時間にそのほとんどを行っていたし、
「情報」でやっていることは、必要に迫られれば自らで学び覚えることが大半。
個人的には、両方とも高等学校で時間を割いて必ず学ばせねばならぬことであるとは思わない。
また、かつてのガッコには「オン」と「オフ」があった。
「オン」である平常時は土曜も授業があったが、「オフ」である生徒の長期休暇中は、多くの教員にとってもまた「オフ」であった。
教師という職業は、そういう「オン」と「オフ」があるものだと世間も思っていた。
だから、世間が週休二日制である中、土曜の午前中に授業があった頃、それに対して不平を言う教員はほとんど誰もいなかった。
それが、
一般企業に倣えと、目標主義、能力主義、成果主義を導入し、管理と監視を強化し続け、
能力の高い者が評価、優遇されるかというと、そうではなく、高い能力を持つ教員の給与も、待遇も、右肩下がりを続けている。
そんな学校に、土曜授業を復活したらどうなるか?
答えは歴然。
0時間目や7時間目の講習は今のまま、通常平日は6時間だった授業に7限目や8限目をぶら下げているガッコは、それらをぶら下げたまま、
それに加えて、土曜日の授業がプラスされるだけ。
生徒も教員も、拘束される時間が増加するだけ。
週休二日制に合わせるために、土曜に勤務した分を、他の曜日のどこかで半日休めるようなシフトが、すべての教員に組めるはずもない。
教育熱心な親たちは、塾通いをさせるなら、土曜もガッコで授業をしてくれる方がありがたいに決まっている。
教育に関心のない親たちも、土日にブラブラされるより、一日でも多くガッコで面倒見てくれる方がいいと言うに決まっている。
一度変えたものを元に戻すことのないこの国の人々、ガッコの土曜日授業というヤツは復活させるかも知れない。
が、本当にそうなったら、
ただでさえ疲弊している、この国のガッコというヤツ、奴隷が奴隷を拵える場所になる。
土曜日にガッコウを復活させるなら、かつてのガッコウがそうであったものを同時に復活させなければ意味はない。
学校に土曜日授業が復活する可能性は低くないかもしれないけれど、
かつてのガッコが復活する可能性は「ゼロ」に近いだろうな……。