イマジン・オール・ザ・ピープル

朝日新聞朝刊に連載していた、筒井康隆氏の『聖痕』が13日で完結した。


当方、十代の頃、氏の作品に嵌っていたことがあるのですけんども、
そんなオイラも歳を食ったのであるのですけんども、
今回の作品の意図は重々理解しておりましたのですけんども、


かつての作品群から受けたようなインパクトはございませず、
画家の息子をイラスト担当に据えた親子コラボでしたが、息子・伸輔氏の作画にも、さしたる興味が湧き起こらなかったのですけんども……、


最後の最後に、作中人物金杉君に吐かせた台詞が、オイラが日頃思っていることと似通っていたので、読みながら苦笑。


「この災害(東北地方太平洋沖地震)と原発事故で、ぼくは人類の絶滅する時期が、想像されていたよりもずっと早まって近づいてきたように思うんだ。車の両輪のようになって自走してきた科学技術文明と資本主義経済の破綻が今同時に起こっていることは間違いないところなんだし……」


「今を境にして人類の衰退が始まり、そして滅亡するんだという認識は災害以後多くの人が持った筈だが、あまり誰も言わないよね」


「これからはやはり、リビドーや複合観念の呪縛から脱した高みで論じられる、静かな滅びへと誘い、闘争なき世界へと教え導く哲学や宗教が必要になってくるだろうね。その場合にはナショナリズムを排除しなければ、その布教を世界に敷衍することはできない筈だ」


「どうせ滅びるなら仲良く和やかに滅びに到ろうではないかと諭すんだ。飢餓による資源の奪いあいやナショナリズムが残るとしても、キリスト教や仏教みたいに理想だけは高く掲げなきゃね」


「日米関係もTPPも領土問題も最終的には食糧問題に包含され収斂される。世界国家に領土は不必要という認識にまで登り詰めれば、残り少ない食べ物を分けあいながら、幸福に、そして穏やかに滅亡していけるだろうよ」


人ひとりがやがては消えていくことが必然であるように、人類のすべてがこの地球上から消えていくこともまた必然。


自身の苦を引き受けるのは、最終的に自分自身でしかないのだけれども、
誰かの苦を引き受ける誰かがいなければ、誰かの苦を引き受ける社会的なシステムがなければ、


すべての人に、和やかで穏やかな「死」が訪れることはない。


人類というのは長い歴史の中、この地球上にのさばりながら、まだそんなシステムを構築するに到っていない。


宮澤賢治の妹トシの言葉


  うまれでくるたて こんどはこたにわりゃのごとばがりで くるしまなぁよにうまれでくる


ナショナリズムなんていらない。世界国家に領土は不必要。