引率裏話

修学旅行の引率付き添い、なんだかんだで10年ぶり。


でしたが、


二十年前に比べると、現状は大きく様変わり。
昔は良かった。とは言わないけれど、その極端な変わりようが、時代というのを物語っている。


道中、生徒らが、付き添い教員にかかる費用についてあれこれ尋ねてくるので、真摯に答えていたのでありますが、
そこまで真面目に明け透けにお金のことを答えてくれる教員がいるとは思っていなかったようですが、


このブログ読んでいる者もいるよーだし、どーせなので、説明しておく。


かつて、旅行に付き添う教員は、交通費、宿泊費、食費に至るまで、1円たりとも持ち出すことはありませんでした。
かててくわえて、夜に行われる教員のミーティングの際には、その土地のごちそうと酒が並べられ、饗応にあずかっていたのでありました。


それが今、


執務中に飲酒することまかりならんということで、旅行中はたとえ夜中でも飲酒厳禁。
ミーティングの際も、出てくるのは水と茶と珈琲。


そして、交通費、宿泊費まで出せとは流石に言わないが、自分で食ったものの金は自分で払えというので旅行中の食費はすべて自腹。
今回の旅行にあっては、バイキングの夕食&朝食各3回分に、2度の昼食ハンバーグ・エビフライ・ランチの費用、約16,000円は持ち出し。
生徒らがむさぼり食っていた夕食、アルコールなしで、1食4,200円也。普通なら絶対に食おうとは思わない。
そして、各教員の旅行中の事故トラブルに対する保険料も、わずかな額とは言え持ち出し。


生徒らは楽しみの上に楽しみを重ねている修学旅行、なのですが、


まだ恵まれていた昔っから、修学旅行がある2年の担任はしたくないと広言して憚らない教員は、どこの職場でも少なからず存在していて、実際にわがままを通す者もいた。
2年生の担任になったからには、諦めて付き添うのだけれど、担任でもないのに自分から付き添いを買って出る人というのはほとんどいないのが現状。


付き添い中は、早朝から深夜に及ぶまでが仕事。要は、寝ている時以外は仕事。
今回は朝は5時半に起き出して、夜は床に就くのが早くて12時半。3日続きの5時間睡眠。


さすがに、超過勤務に対する代休措置と手当の支給はあるけれど、手当は時間で計算すると、高校生のアルバイトの時給にも及ばない。
今回の手当では、持ち出しの食費16,000円に手が届かず足が出る。


代休にしたところで、平常授業のある時に取れるわけでなし、いきおい取れるのは長期休暇中。
かつては、長期休暇中といえばわざわざ有給休暇を取ることもなく休めていたのが、そうは問屋が卸さなくなり、要は有給休暇の代わりに代休を取ってねというだけのこと。


後ろ指をさされることのないよう、揚げ足を取られることのないよう、清廉潔白に執務に当たるというのは大事なのだが、


突き詰めれば、移動の際の交通費、寝起きのための宿泊費も、教員自身が支払いなさいということになるわけで、
食費だけ払えというのは、考えてみれば茶番。ご都合主義。


いっそのこと、交通費、宿泊費も自腹!と、すればよい。
そうなれば、付き添う者などいなくなり、修学旅行そのものが成立しなくなると思われる(笑)。


そして何より、


生徒ひとりが今回の旅行にかかった費用は約14万円。国内旅行で14万円は破格。
大抵の学校が、10万以内に抑えている。8万円台がギリギリという学校があることも知っている。
なのに、その14万円を納められず難渋している家庭がある、あったという話はトンと耳にしない。


本人は行きたがっているが、金の工面ができない。行くつもりにしていたがギリギリでキャンセル。
そういう話が日常だった学校もある。


今回、一緒に出かけた生徒たち、ほとんどが自身の気づかないところで、恵まれている。まともな親のいるまともな家庭で暮らしている。
それはステキなこと。なのだけれど、それが当たり前なのだ。とは、思わないで欲しい。


現状を、今の自分を、当たり前だ。と思う時、その人からは「想像力」が消えていく。
人間にとって最も必要なものは「金」でも「地位」でもなく、「想像力」なのだから。


閑話休題


旅行から戻ったら、給湯器の具合がおかしくなっていた。
カミさんが業者を呼んだら、修理ではなく交換を勧められたとの由。


交換にかかる費用20万円。予期せぬ出費20万円。
というわけで、「想像力」だけでは生きていけない。そこそこの「金」も必要ではある。


あぼ〜ん。