マニュアルには書いてない

無免許運転で、


多数の人をなぎ倒し、死に至らしめた青年あって、


一歩間違えたら、そういうこと引き起こしてそうな若者、身近にたくさんいたことあるだけに、


他人事とは思えませんのですが、


被害者側の電話番号を、加害者側に教えた伝えた、何やっとんねんというお話後から付いてきて、警察やら学校やらに、非難囂々なのでありますが、


警察やら学校やらで仕事している人たちに、軽々に信頼など置くことはできない。
と、常日頃から思っております。


オレは、学校などいうところに勤めておるのでありますが、
危機管理についての意識というのは総体に、かなり低いと思っております。


そして、


警察や学校に限ったことではなく、バッシングしている人々も、そういうことどもに適切に対処できる能力は、往々にして欠けていると思うのであります。


例えば、


学校に、
「○年の○○の保護者ですが、娘は朝から体調が悪いと言っているので、休めばと言うのに、今日はどうしても休めないと登校したのですが、無事でおりますでしょうか?」
という電話を受けた時、あなたが教職員ならどう対応するか?


「確認してみます」と言って受話器を置いて相手を待たせ、当該生徒の所在を可能な限りにおいて確認し、現状を相手に伝える教職員の方が多いだろうと思われるのであります。


なのですが、こういう電話、


相手が、本当に当該生徒の保護者なのかどうかはわからない。
誘拐、拉致などの目的を有しておって、当該生徒の所在の確認をしている悪漢であるかもわからない。
はたまた、養育権を巡って争っている一方の親が、我が子を確保せんものと、情報を欲しがっているのかもわからない。
或いは、己のDVにより保護隔離されているところの我が子を、下校時に連れ去ろうとしているのかもわからない。


のであるから、こういう電話には、


「そちら様の電話番号をお教え頂けますか?当該生徒が本校に在籍しておりますかどうか、また、在籍しておりました場合登校しておりますかどうか、確認させて頂いた上で、管理職の方より改めて連絡させて頂きます」


と告げて、受話器を置く。
その後、そういう旨の電話があったことを当該生徒に連絡。事実関係を確認した後で対処。
というのが正解なのであります。


が、


そういうことを臨機応変にできるニンゲンというのは、実は多数派ではありません。


多くのニンゲンは、そういう対処対応を、教えられなくてはできない。


警察にしたところで、


夜中、我が住まうところの駐車場で怪しい動きをしている複数の人間がいる。自身で確認に行くのは危険が伴いそうだから、警察に通報、出動を要請する。


と、警察は発報したこちらの身元を確認する。
そこで、素直に身元を告げると、


やって来た警官が、不審者に尋問しながら、
「ここの○階の○○さんから通報があったから云々……」と、不審者どもに告げる警官は、掃いて捨てるほど存在しているのであります。


こういうこと、実際に見聞きしていますから、決して誇張ではありません。


今、自分の前に提示された課題がどういう意味を持っているのか?
それに対して、己のやることなすことの結果が、誰に何をもたらすのか?


すべては、あらゆる可能性をどこまで計算できるかという「想像力」にかかっている。


何十、何百もある可能性のそれぞれを「マニュアル化」して、その対処対応を、そこにいるすべての者に学ばせることは不可能に近い。


すべては、個々人の「想像力」に委ねられている。


オレにしたところで、


誰かに怪我をさせられたり、物を壊されたり、盗まれたという生徒がいて、
被害者側の保護者から、「相手の連絡先を教えろ、なぜ教えない」
加害者側の保護者から、「謝罪したいから、相手の連絡先を教えてください」
なんてこと、数知れずあった中、


そのあたりの駆け引きは、いつも綱渡りでやって来て、ギリギリのところを何度も擦り抜けて来たわけで、慎重の上に慎重を重ねても、今後も失敗しないという保証はない。


にしても、


今回の警察や学校の関係者は、一片の「想像力」というのもなかったようで、


マニュアルに書いてそうなこともわからなかったようで、


加害者側を過剰に保護しているとか何とか、そういう問題ですらありませず、


やんぬるかな……。