クレイジー・ハート

「KOKESHI」デニローさんオススメの映画


"CRAZY HEART"を観る。


借りて返しに行く手間を考えれば、857円だったから購入。
デフレスパイラルは外食産業のみにあらず。
その昔、持っておきたい映画のレーザーディスク、1万円近くしたのだが……。


この映画、


一般観客にとっても味わい深いんだろーが、
バンドやってるモンにとっては、また別の見所が多かった。


楽屋でのあれこれとか、バックバンド務めてる連中の音楽に対する姿勢とか、リハにおけるあれこれとか、取りあえずみんな演奏が上手くて達者だから感心しちゃうとか……、


かつての栄光引きずってダラダラ生きてるだけのダメ人間だが、
ギターは大事にしている。アンプはフェンダーでなきゃダメだと音にはこだわっている。音楽への愛情は捨てていない。
そーゆートコがうまく描かれているから、ダメ人間でも共感できる。
才能あるんだから、なんとかしろよオッサン、と思うようにできている。


のだけれど、


かつて一世を風靡したとはいえ、57歳の緩んだ体を持て余している汗臭いアル中のオッサンシンガーに、
バツイチの子持ちとはいえ、30代の美人記者は惚れてくれないと思う。


世の中そんなに甘くない(笑)。


そんでもって、


どん底から、たとえ歳を食っていても、人生って立て直せるんだぜ。
という、爽やかなハッピー・エンドでしたが、


世の中そんなに甘くない。と思う。


のだけれど、振り返れば、


時代と社会がお手々繋いでイケイケドンドンだった頃に次々現れた、
アメリカン・ニュー・シネマの、袋小路どん詰まり「俺たちに明日はない」感というのは、シニカルかつ冷静に世の中を眺めていた連中の、イケイケドンドンに対する「警告・警鐘」だったのかも知れん。


世界中のどこもかしこもが、時代と社会がお手々繋いで、どん詰まりに向かってひたすら滑り落ちて行ってる感のある今、


映画の世界ぐらいは、這い上がれるトコ見せたいし観たいってことなのかも知らん。


とはいえ、


この映画、バンドマンと言えばツアー、ツアーと言えば聞こえは良いがドサ回り。実はロード・ムービーの様相を呈しているので、オイラの好みのツボだった。


バッド・ブレイクは立ち直ったが、それは才能があればこそ。


周囲からその才能を信頼評価され、見捨てられもせず、多くの人に支えられ、そりゃ立ち直らなきゃダメでしょが。と思うのだった。


普通なら、とっくに見捨てられてますって……。


世の中そんなに甘くない(笑)。