パラレル

例えば、


朝、出かけようとしたまさにその時、


片足突っ込んだコンバース履くのやめて、今日は寒いからブーツにしよう。


と、編み上げの紐結ぶのに手間取って、出かけるのが3分遅れる。


コンバースのまま、3分早く出ていたら、


いつもならそんなところから飛び出て来るはずのない車が、目の前に飛び出て来て、


ジ・エンドだった……。


ということがある。


逆に、


ブーツに履き替えて3分遅くなったことで、


本来なら遭遇することにはなっていなかったはずの車に出くわして、


ジ・エンド……。


ということだってある。


オレたちの「生」とか「死」とかいうヤツは、


そんな、たわいないひとつひとつの事どもによって、


彩られ、決定付けられている。


例えば、


オレの親父は、


あの日あの時あの病院を、患った病から生じる妄想によって、強引に飛び出さなければ、


あの日あの時、彼岸に行くことなく、


その後の数年を生き長らえていたかも知れない。きっと、長らえていた。


でも、


それが親父にとって、オレにとって、


幸いだったのか、より不運な結末を用意していたのかは誰にもわからない。


人生には、そういう瞬間があって、


誰がそれを司り決定しているのかもまた、知るべくもないが、


そんなひとつひとつの瞬間をかいくぐりながら、


オレはまだ、


こちら側で生きている。


そんなこと思った一日。 行きも帰りも雨。